さやさやの為替地図

頑張れば頑張るほどはまるFX沼からの脱出の物語

時を超えたエリカ

人生の変わり目のおじさん、さやさやです。

今回の記事にFXは全く出てきません。
ちょっと鬱っぽい感じになるかもしれないので閲覧は自己責任でお願いします。

時系列で古い順から書いていきます。

ボクが会社を作って大体15年位になりますが、創業当時にお世話になっていた取引先の一つにカヤノという会社がありました。
茨城県の畑が広がる県道沿いに立つ小さな工場で、都内の会社の下請けがメインの仕事でした。
ボクの会社も仕事をお願いしていたのですが、納期が厳しい場合などは箱づめ等の比較的簡単な作業を手伝うことが多くありました。
創業して日も浅く、一応社長ということにはなってはいましたが、トラックの運転も荷物の積み込みも箱詰めも、場合によっては機械の操作も何でもやるという感じでした。

カヤノさんにてパートタイムで働いている中山さんという女性がいたのですが、県道を挟んでカヤノさんの工場の前の家に住んでいたので忙しいときにはいつもカヤノさんの社長に呼ばれて一緒に作業していました。

中山さんの家はお城みたいな立派な瓦屋根の古い農家さん風の日本家屋でしたが、旦那さんが随分前に亡くなっていて中山さんが一人で子供三人を育てたという話でした。

中山さんの長男はトヨタのディーラーで働くメカニックで奥さんと子供がいました。
次男が元暴走族のDQNで最近やっと改心して自動車の中古部品の販売を始めたという噂でした。
末っ子は当時高校三年生のエリカという女の子でした。

ボクが急ぎの仕事を持っていくと、エリカも学校から返ってくると中山さんと一緒にアルバイトで仕事を手伝ってくれることが良くありました。

当時ボクは20代なかばくらいでカヤノさん社員を含め、関係者では一番若かったと思います。
年が近いからかエリカに懐かれてしまい、やたらと話しかけられるようになってしまいました。
美熟女大好きなボクとしては女子高生では子供にしか見えないので幼稚園生の娘に接するのと同じように接していました。

「エリカねぇ、今日学校で後輩の男の子にかわいいって言われたんだよ」みたいなどうでもいい話を、納期が間に合わなそうで必死な時に言われたりします。
子供なので無下に対応するわけにもいかず、とはいえ興味もなく

「良かったね、エリカは可愛いからみんそう思っているよ」みたいな感じの、今思えば雑な返事になっていたと思います。

エリカには癖があって、片足で立って手を広げてバランスを取るみたいな動作を良くしていました。
ケンケンパのケンで止まって遊んでいるような感じでした。

中山さんにメールアドレスを教えたら何故かエリカからもメールが来るようになってしまい内容が女子高生のそれで、かっこいい先生がいるとか、ほんとに1ミリも興味がないことばかりで、けっこう面倒くさかったのを覚えています。

同居していた中山さんの長男と奥さんと子供が家を出ていったという話を他のパートさんたちがしているのを耳にしました。
農家風の家で長男が家を出ていくのは珍しいことらしく、中山さんがお嫁さんをいじめたんじゃないのとか、下世話な話をしていました。

ボクもエリカに「お兄ちゃんの奥さんをお母さんと一緒にいじめて追い出したんじゃないの」みたいなことを冗談のつもりで言ったのですがエリカは一瞬真顔になって「家も色々あるんだよ」と答えました。
もう触れないでおこうと思いました。

ボクの仕事は順調でカヤノさんにお願いするお仕事も増えていき、夕方は毎日のようにカヤノさんで作業していました。
そんなある日、中山さんの次男が自宅の梁にロープを掛け、首をつっているのが見つかりました。
カヤノさんでその話を聞いて、ボクは県道を渡って中山さんの家に行きました。
次男は棺桶に入っていました。
ボクは中山さんの家に入るのは初めてでしたが、太い柱と梁が通った薄暗い日本家屋のなんとも言えない雰囲気と広い座敷に置かれた棺桶が強烈に印象に残っています。
棺のそばには中山さんが下を向いて座っていました。
ボクは中山さんにどう声をかけようか必死で考えましたが思いつかず、なにか手伝えることがあれば言ってくださいみたいな事を言った気がします。
エリカはいませんでした。

その後は数日間、中山さんとエリカの姿は見ませんでした。
メールもありませんでいた。

他のパートさんの間では中山さんの家族事情の話題ばかりでした。
本当かどうかは中山さんにもエリカにも聞けないのでわかりませんが、パートさんたちの話では次男の自殺にヤクザが絡んでいるとのことでした。

次男は暴走族の頃から地元のヤクザに上納金を収めていて、暴走族を引退したあとは覚醒剤の売人をやっていた。
足を洗って堅気の仕事で自動車部品販売を始めたが、その売上から上納金を収めるようにヤクザに要求され、足を洗え無い事に絶望して自殺した。

次男は覚醒剤を自分でもやっていて、長男が家を出たのは次男と何らかの理由で喧嘩になりナイフで刺されたので奥さんの実家に引っ越した。

次男は自殺したときも覚醒剤をやっていた。

本当かどうか全くわかりませんが皆、仕事もそっちのけでそういう話をしていました。
1週間もすると中山さんもエリカも普通にカヤノさんに来るようになり、何もなかったかのように仕事をして、時々、学校の先生の話とか、後輩の男子の話とか、くだらないメールがエリカから来る日常に戻りました。

時が経ち、エリカは高校を卒業して、自動車の免許を取り、地元の納豆工場に就職しました。
一緒に仕事をすることは減って、ただ変わらず「エリカ結婚できるかな?奥さんのどこが好きで結婚したの?」みたいなメールが時々来るという感じでした。

一年後くらいにカヤノさんが倒産してしまい、ボクがカヤノさんに行くことも無くなってしまいました。
その後、エリカからのメールも次第に来なくなり音信不通となりました。

その後もなにかの都合でカヤノさんの前の県道を車で走ることは週に一回位の頻度でありました。
その度に工場と向かいの中山さんの家を見るのですが、どちらも人の気配は全くありませんでした。

カヤノさんの社長は息子さんの家で隠居生活しているという話でしたが、中山さんに関しては何もわかりませんでした。

今に至る十数年の間、ボクは何度も中山さんの家の前を通り、古い巨大な日本家屋が更に古びていくのを見ていました。
その巨大な朽ちていく家を見ると、中山さんは今何しているんだろうとか、エリカは何をしているんだろうとの思いが時折湧き上がってきました。
十数年間、何度も家の前を通ったのに、人の姿を目にすることはありませんでした。

そして現在、ボクはカヤノさんのお世話になってそれなりに大きくなった会社を辞めて、人生を変えようと思い立ちました。

7月くらいから色々と準備して今週の月曜日の9/11から具体的に行動に移し、本格的にスタートを切ることにしました。

ところが9/10の日曜日、ボクはコロナの後遺症だったのか、メンタルが崩壊していて自殺の衝動にかられていました。
頭では嫁タソや子どもたち、友人、仕事仲間、ツイッターで仲の良い人たち、もいて、全然孤独ではないし、やりたいこともあったはずで、死ぬ理由など無いのはわかっているのに死にたくなっていました。
自分ではどうしようもなく、全然繋がらない、いのちSOSみたいなところに電話をかけまくっていました。
ただ、10時すぎくらいから急激に回復してきて、午後にはバリバリ仕事をしていました。

9/11の朝、ボクにとっては新しい人生の第一歩の日です。
通勤でカヤノさんの前の県道を通ることになりました。
左手にカヤノさんの工場の跡地、右手が中山さんの日本家屋です。
少し渋滞していて流れが悪かったのでゆっくりとカヤノさんと中山さんの家の間を通り抜ける際に、右手の中山さんの家の前に30歳くらいの女性が片足立ちして、手を広げてバランスをとるような格好して、笑顔で道路を眺めていました。
普段着で化粧っ気のない感じは、幼稚園のバスを待っている若いお母さんという印象でした。

通り過ぎてから思わず声が出ました。

「美熟女エリカ!」

スタイルも顔もそうだけど、何よりも、あの片足立ちはほぼ間違いないと思います。

よほど停車して声をかけようかと思いましたが、幸せそうな姿だったのでボクはそのまま通り過ぎました。
ボクくらいの美熟女通になると一目見ただけでどういう人生を過ごしてきたかイメージできます。
喜びや悲しみを乗り越えて消化しなければ身につかない雰囲気。
美熟女は一日にして成らずです。


ボクの人生で大きな変化の瞬間に、突如現れたエリカは偶然だったのだと思います。

だけど、

「エリカも頑張って幸せになったから、さやさやさんももうちょい頑張れ」というメッセージのように捉えてしまう自分がいます。

人生って退屈なときもあるけど、時々こういう偶然とは思えないことが起こったりするのでやはり面白いかも。

偶然なのか、目に見えない力が働いているのか、何にせよ前を向かせてもらった気がしています。

元気になったよ(*´ω`*)